初心者必見

フロー計算書とは

フロー計算書とは

國貞克則先生に聞く「決算書の読み方 初心者向け」全6回(4)キャッシュフロー計算書(CS)とは

CSは英語で“Cash Flow Statement”、直訳すれば「現金流れ計算書」、つまりCSは現金の出入りを表す「収支計算書」です。
収支計算書は、通常「収入」「支出」「残高」の3つの欄に分かれていますが、企業が作る収支計算書であるCSは違った分かれ方をしています。「営業活動によるキャッシュフロー」「投資活動によるキャッシュフロー」「財務活動によるキャッシュフロー」の3つの欄に分かれています。なぜこのように分かれているかということは、連載の第1回で説明したとおりです。
図4-1で各欄に何が書かれているかを説明していきましょう。一番上の営業キャッシュフローの欄は、商品やサービスの販売による収入や、商品の仕入や給料の支払いによる支出など、営業活動による現金の動きが表されています。

図:CSの構造

図4-1のCSの表の中の項目を見てください。営業収入(+)、商品の仕入支出(-)、人件費支出(-)、その他の営業支出(-)など、現金が入ってくるものは(+)、現金が出ていくものは(-)で表されています。
真ん中の投資キャッシュフローの欄は、株式などの有価証券の取得や売却、工場や設備などの固定資産の取得や売却など、投資活動による現金の動きが表されています。
図4-1のCSの表の中の項目を見てください。有価証券や固定資産を取得すれば現金が会社から出ていくので(-)、有価証券や固定資産を売却すれば現金が会社に入ってくるので(+)で表されています。
一番下の財務キャッシュフローの欄は、株式発行による資本金としての収入や、金融機関からの借入やその返済など、財務活動による現金の動きが表されています。
図4-1のCSの表の中の項目を見てください。借入をしたり、株式発行して資本金を注入してもらったりすれば現金が会社に入ってくるので(+)、借入金を返済すれば現金が会社から出ていくので(-)で表されています。

見れば会社の状況はおおよそ把握できるキャッシュフロー計算書とそのグラフ

キャッシュフロー計算書(CS)の重要性が高まってきている

昔は、決算書と言えば基本的にPLとBSでした。それは、人為的に作りだした事業年度(通常1年)の営業活動を正しく計算するということがまず必要だったからです。つまり、PLは1事業年度の正しい営業活動を反映させるために、現金の動きのありなしにかかわらず取引が成立すれば、その取引はその事業年度のPLに計上されます。しかし、このことによってPLだけでは現金の動きがわからなくなってしまいました。
さらに、PLは会計上の前提や認識によって正しい利益を計算していきますので、それが少し悪用されればすぐに粉飾に繋がっていきます。
一方、CSは現金の動きをあらわす表ですから、なかなか粉飾できません。CSの現金残高が、金庫や金融機関に預貯金されている現金と一致しなければ、CSはどこかが間違っていることになるからです。
私の会計研修には、米国の子会社に社長として赴任したが、「会計がわかっていないと社長は務まらない」と言って、帰国時に私の会計研修を受講される方がおられます。彼らが口を揃えて言うことは、米国の金融機関が企業にまず提出を要求してくるのはCSだということです。
日米欧ともに、決算書の掲載順はBS、PL、CSですが、アマゾンの決算書を見ると、最初にCSが掲載されています。CSの重要性が高まってきているのだと思います。

キャッシュフロー計算書(CS)から会社の状況や経営者の意思が見えてくる

図:CSの8つのパターン

業績の良い会社は営業キャッシュフローが(+)になります。営業支出より営業収入の方が多い、営業活動をすればするほど会社に現金が増えている状況です。①から④のパターンです。
そのような会社は一般的に財務キャッシュフローが(-)になっています。つまり、借金をどんどん返済して経営安定性の高い優良企業を目指すわけです。②や④のパターンです。
③のパターンは調子が良くて将来戦略が明確な優良企業の例です。調子の良い会社ですから、もちろん営業キャッシュフローは(+)で、営業活動によって現金を増やしています。将来の事業戦略が明確な会社は将来に向けての積極的な投資を行います。ですから投資キャッシュフローは(-)です。この投資に必要なお金を、自分で稼ぎ出したお金(営業キャッシュフロー)だけでなく、銀行からの借入金や株式の発行などによって調達してきているのです。なので、財務キャッシュフローが(+)になっています。
一方で、業績の良くない会社は営業キャッシュフローが(-)になります。営業収入より営業支出の方が多い、つまり営業活動をすればするほど会社の現金が減っていっている状況です。⑤から⑧のパターンです。
そのような業績の悪い会社に天からお金が降ってきたりしませんので、そのような会社は一般的に財務キャッシュフローが(+)になっています。つまり、事業効率が悪くて営業活動すればするほど会社のお金が少なくなっていっているのを、借金をしてなんとか現金をつないでいるような状況です。⑤や⑦のパターンです。
さらに状況が悪いのは⑤のパターンです。営業キャッシュフローが(-)で財務キャッシュフローが(+)になっています。さらに、この会社は投資キャッシュフローまで(+)です。
投資キャッシュフローがプラスというのは、誤解しやすいのですが、投資活動によって現金が入ってきているということです。つまり、自分が持っている土地や株式などの資産を売却してお金を集めているわけです。
このような「-、+、+」の会社は、営業すればするほど会社のお金が少なくなっているのを、銀行からお金を借りるだけでなく、自分の体を切り売りしてなんとかお金を繋いでいるという、かなり状況の悪い会社です。
このように、CSのパターンを見れば会社の状況はおおよそ把握できるのです。

スーツに笑顔の國貞先生

國貞克則(くにさだ・かつのり)
ボナ・ヴィータ コーポレーション代表取締役
1961年岡山県生まれ。東北大学機械工学科卒業後、神戸製鋼所入社。海外プラント建設事業部、人事部、企画部、海外事業部を経て、1996年米国クレアモント大学ピーター・ドラッカー経営大学院でMBA取得。2001年ボナ・ヴィータ コーポレーションを設立。ドラッカー経営学の導入支援や会計研修が得意分野。著書は『財務3表一体理解法』(朝日新書)、『ドラッカーが教えてくれる「マネジメントの本質」』(日本経済新聞出版)など多数。訳書に『財務マネジメントの基本と原則』(東洋経済新報社)がある。

直接法キャッシュ・フロー計算書

そして、「キャッシュ・フロー経営」という用語も生まれました。損益計算書上の利益の追求はもちろんですが、“どれだけのキャッシュを稼ぎ出し、フリー・キャッシュ・フローをどれだけ増やすか”を重視する経営です。最近では不正会計を起こした東芝が、「当期利益至上主義を脱却し」、「キャッシュフローに重点を置いた業績評価」に移行すると宣言しました*。
* 東芝 (2015年9月7日) 『過年度決算の修正、2014年度決算の概要及び第176期有価証券報告書の提出並びに再発防止策の骨子等についてのお知らせ 別紙 再発防止策の骨子について』。

また三菱商事は、収益性の高い資産への入れ替えを促進するために、部門別のフリー・キャッシュ・フローを算出し、部門別の現金収支の管理を徹底していくとしています*。
*「三菱商、現金収支の管理徹底 全部門、3カ年で黒字に」『日本経済新聞』2016年6月23日、朝刊。

2 直接法のキャッシュ・フロー計算書

2.1. 直接法と間接法

*1 他には、特別退職金の支払額、役員退職慰労金の支払額、災害損失の支払額、補助金の受取額、補償金の受取額、保険金の受取額、賃貸料の受取額、移転費用の支払額、などの記載事例があります。
*2 他には、無形固定資産の取得による支出(売却による収入)、定期預金の預入による支出(払戻による収入)、敷金及び保証金の差入による支出(回収による収入)、短期貸付けによる支出、短期貸付金の回収による収入、長期貸付けによる支出、長期貸付金の回収による収入、などの記載事例があります。
*3 他には、社債の償還による支出、株式の発行による収入、などの記載事例があります。
*4 この調整項目も会社によりますが、20項目前後の調整項目があります(次項参照)。

2.2. 直接法のキャッシュ・フロー計算書の長所と短所

(1)直接法のメリット

*1 「キャッシュ・フロー会計情報と企業価値評価―九州地区の中小企業をめぐる実証分析」 税務経理協会 岡部勝成 2010/03 45ページ。直接法と間接法のキャッシュ・フロー計算書の有用性にかかる書籍や論文を渉猟した限りでは、この文献に長所がもっとも網羅的かつ明瞭に書かれているようでしたのでここに引用させていただきました。
*2 IASB(国際会計基準審議会)が2001年10月に審議し、直接法だけを認めました(原則10「キャッシュ・フロー計算書」)。IASBは、直接法だけを認め、間接法を認めない理由を3点あげており、これはそのうちの1点です。要するに当期純利益に対する調整項目が増えてきて、当期純利益と営業活動によるキャッシュ・フローの差額を理解することが難しくなったということです。ある研究で実際に調査すると、当期純利益に対する調整項目は1社平均16.6項目もあり、そのうち2社は24項目もあったそうです。しかもこの調整項目は分類されておらず、配列の順序も一様ではないため、非常にわかりにくくなっているとされます。(鎌田信夫 (2002年) 「業績報告書としてのキャッシュ・フロー計算書–IASB原則書案に関連して」 『産業経済研究所紀要』 第12号 86ページ。)

(2)直接法のデメリット

3 直接法による作成が今まで難しかった理由

将来キャッシュ・フローを予測する点では直接法の方がよいとされながらも、前項のデメリットにより、直接法を作成している企業はほとんどいません。
東証と名証のそれぞれ第一部と第二部に過去11年間継続して上場していて連結財務諸表を作成している企業1,フロー計算書とは 765社中、直接法を採用している企業は1社もありません。*
* 日本政策投資銀行設備投資研究所編 (2015年) 『産業別財務データハンドブック 2015』 日本経済研究所。また、その他の市場まで含めても、直接法を採用する上場会社は10社程度にすぎないそうです。(桜井久勝 (2015年) 『財務諸表分析〔第6版〕』 中央経済社、100ページ)。

その具体的な原因は、多くの企業は損益計算を中心に組み立てられた会計システムを用いており、直接法に必要なデータを収集する会計システムを持っていないためです。*
* 永田靖 (2010年) 『キャッシュ・フロー会計情報論―制度的背景と分析手法(広島経済大学研究双書)』 中央経済社、91ページ。

4 将来キャッシュ・フローを予測するうえでの有用性

5 TMSで直接法キャッシュ・フロー計算書を作る意義

(1)利益確定を待たずにいつでも見られる
TMSで作る場合は、インプットが毎日銀行から自動受信する銀行明細になります。したがって、決算による利益確定を待たずして、いつでも前日時点のキャッシュ・フロー計算書を見ることができます。

(2)事業ごと、会社ごとなど、柔軟な切り口で見られる
将来キャッシュ・フローを予測するという観点では、連結によるグループ全体だけではなく、事業別や会社別等のセグメントごとに見て分析をしたいはずです。しかし一般に、セグメント別に当期純利益は算出されていません。TMSでは銀行取引1件ごとを集計して直接法キャッシュ・フロー計算書を作成しますので、その表示する切り口を変えることによってセグメントごとの営業キャッシュ・フロー計算書がいつでも見られることになります。

(3)時系列の比較ができる
決算時点だけでなく、常にキャッシュ・フローが捉えられ、データベースに蓄積されているため、時系列で比較をすることができます。四半期ごとに限らず、月次、さらには週次、日次で把握できます。これは、経営計画や事業の進捗を把握するために時系列に見る時には不可欠なことです。とくに、季節性がある事業や企業には月次、週次推移は特に有効であると思われます。また、キャッシュ・コンバージョン・サイクルを短縮しようとする企業などは、キャッシュの日次の動き、ときには日中の動きも把握して、非常に精緻な管理をしています。

6 TMSによる直接法キャッシュ・フロー計算書の作成方法

6.1. 基本的な作成方法

6.2. TMSで作る場合の制約
TMSからキャッシュ・フロー計算書を作る場合にも若干の制約はあります。

(1)インプットデータ次第であること
銀行から送られてくる明細のデータでキャッシュ・フローを特定します。明細のデータだけでは不十分な場合、入出金予定のデータで補完します(後述)。これらのデータが正しくキャッシュ・フロー計算書の項目と紐づけられるかがカギとなります。キリバでは、データ上のコード(取引コード、科目コード等)だけでなく、摘要欄の文言もその紐づけのキーとして使えますので、ある程度細かく紐づけられますが、その精度は銀行と予測のデータの内容次第であることは否めません。

(2)TMSを導入できる会社が対象であること
取引銀行からデータを自動で取得できない会社は、キャッシュ・フロー計算書を自動で作成することは難しくなります。当該子会社に対する資本構造や支配力等諸般の事情で、その子会社にTMSを導入できない場合や、その子会社からデータを取得できない場合については、同じ仕組み、同じ粒度で直接法キャッシュ・フロー計算書を作成することはできません。持分法適用会社などは容易ではないかもしれません。

6.3. TMSでの具体的な作成方法
TMSでのキャッシュ・フロー計算書の作り方を、キリバを例に具体的に説明します。キリバでは、グローバルの資金ポジションを一覧表示する「資金ポジションワークシート」を使います。いくつかの切り口で表示できるようになっていますので、キャッシュ・フロー計算書の項目で表示させます。

(1)データのマッピング
銀行取引をキャッシュ・フロー計算書の所定の項目に紐づけて表示するために、各銀行取引に以下の手順でコードを振ります。

(図4)予実の基データからキャッシュ・フロー計算書を表示させるまでの流れ

(2)グループ内取引の扱い
連結会社相互間で発生したキャッシュ・フローの相殺消去については、実際にキャッシュの動きがあるので、そのまま表示されますが、入金側はプラスの数字で、出金側はマイナスの数字で表示され、合計は差し引きゼロとなりますので問題ありません。むしろ純額にならず総額で表示される利点があります。グループで見れば相殺され、個社別に見れば、連結会社取引として表示され、特段の相殺等の操作をすることなく、ワークシートの表示条件を切り替えるだけですみます。

(3)「現金及び現金同等物に係る換算差額」の作り方
この項目はキャッシュ・フロー計算書上で、ただ一つの実入出金を伴わない項目です。為替変動による前期末残高との差額を表示するものですが、実入出金を伴わないため、仮想口座を作り、この換算差額を期末時点のキャッシュ・フローとして作り、この仮想口座に入れます。

6.4. 営業活動によるキャッシュ・フロー(小計より上)のモニタリング
以上でTMSによる作成方法を述べましたが、実務面を考えると意味があるのは、営業活動によるキャッシュ・フローのうち小計以上である、「営業収入」「仕入支出」「人件費支出」「その他の営業支出」に限って作成して、モニタリングしていくことがよいと考えます。

はじめてのキャッシュフロー計算書【資金繰り表との違いや読み方を解説します】

事業者に雇用を維持していただくうえで、いちばん必要なはずの雇用調整助成金。 専門家の社労士さんからしても、制度がややこしくて、申請から給付まで時間がかかっており、残念ながら制度として機能していないとまで言われる始末。 さて今回は、雇用調整助成金の制度の内容を説明するものではなく、雇用調整助成金の経理処理をメインとしたお話です。 また、税金については、会社では法人税、個人事業主では所得税がそれぞれ課税されますが、消費税は課税されません。 事前の休業等計画届の提出が必要な一般措置で .

3つの財務諸表の基本的な読み取り方(貸借対照表編)

財務諸表とは、会社法や金融商品取引法などにより作成が義務付けられている書類で、「貸借対照表」と「損益計算書」のほかに「キャッシュフロー計算書」の3つを「財務三表」といいます。 今回は、財務三表のなかでも「貸借対照表」について基本的な仕組みと読み取り方を解説していきます。 貸借対照表は、ある時点での会社の資産、負債、資本のストック状態を表したものをいいます。後で説明しますが、資産合計は負債と資本の合計と一致する(バランスする)ので、バランスシート(Balance Sheet)やビーエス(B/S .

会計入力のやり方がわからない・・・

会計事務所一年目のわたしの悩みです。 税理士試験の勉強を通じて、会計のこと、消費税、法人税などの税金のことはある程度わかっていましたが、まさかここで躓くとは思っていませんでした笑 こことは、会計入力。 会計、税金の知識があるからといって、仕事ができる、問題なく処理できるというわけではありません。 知っているが故、深く考え込んで身動きが取れなくなってしまうこともあります。 会計入力についてこんな疑問を持ったことはありませんか? 会計入力の疑問 通帳を見て入力?振替伝票ちゃうの?え .

事業主貸と事業主借のちがい【意味と使い分け、税務調査の問題など】

事業主貸と事業主借の疑問 事業主貸(借)の意味がわかりません なんで法人ではでてこないのに、個人事業主ではでてくるの? フロー計算書とは 事業主貸と事業主借は使い分けないといけない? 翌期首に繰越すと消えているけど? 金額が多すぎるとなにか問題でもある?税務調査とか不安・・・ くわしくは後述しますが、事業主貸(借)とは、事業とは関係ない「プライベート勘定」なので、個人事業主でしかでてきません。 翌期首に「あれ?消えた?」と思ってしまいますが、元入金という法人でいう資本金に吸収されています。 ご自身で理解していれば、使い分け .

減価償却のしくみ【キャッシュフローに与える影響は!?】

げんかしょうきゃく・・・って言葉よく聞きませんか? 漢字では、減価償却って書きます。 我々の業界だけでよく使うことばではなく、一般的なことなので、ご存知の方も多いかと思いますが、資産として利用した分の価値を減らして、経費にするという意味です。 減価償却の意味はなんとなく分かっていても、こんな疑問はありませんか? 減価償却のしくみがよくわかりませんねぇ 減価償却とキャッシュフローの関係もよくわかりませんねぇ このあたりについてまとめたいと思います。 読み進めていただ .

【決算書を深く学ぶ】キャッシュ・フロー計算書の読み方と活用方法

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キャッシュ・フロー計算書とは、一会計期間 における資金の増減をあらわす決算書類の1つであり、貸借対照表および損益計算書と同様に企業活動を報告する財務諸表として位置づけられています。
資金に関する情報は、企業の存続可能性や債務支払能力を判断するうえでは、重要な情報になります。しかし、貸借対照表においては資金の残高(ストック)までは読み取ることができますが、何が原因で資金が増減したかというフローの情報までは読み取ることができません。そこで登場するのが、キャッシュ・フロー計算書です。キャッシュ・フロー計算書は、資金という企業の存続可能性に関わる重要な情報に着目し、そのフロー情報を把握しようというものです。

1 キャッシュ・フロー計算書の重要性

資金がショートすると黒字でも倒産することがありますし、逆に赤字であっても資金繰りがうまくいっていれば、倒産を避けることもできます。資金は会社にとっての血液に例えられることがあります。血液がうまく循環していれば、元気に長生きすることができますが、血液の流れが悪くなると体調を崩し、突然死するのと同じです。
そのため、損益計算書や貸借対照表だけでは読み取れない、企業の存続可能性に関わる資金の情報が表示されるキャッシュ・フロー計算書は、企業の経営者だけでなく、投資家にとっても非常に重要な決算書類になります。
また、最近では企業価値を評価するうえで、将来のキャッシュ・フローを用いることが多く、キャッシュ・フローを重視する経営(キャッシュ・フロー経営などとも言われます。)を行うことで、企業の安全性を高めるだけでなく、結果として企業価値を高めることにもつながります。

2 キャッシュ・フロー計算書が対象とする資金とは何か?

現金および要求払預金
手許現金
普通預金
当座預金
通知預金

容易に換金可能であり価値変動リスクが少ない
3ヶ月以内定期預金
譲渡性預金
CPなど

3 キャッシュ・フロー計算書の仕組み

  1. 営業活動によるキャッシュ・フロー
  2. 投資活動によるキャッシュ・フロー
  3. 財務活動によるキャッシュ・フロー
  4. 現金および現金同封物の増減額
  5. 現金および現金同封物の期首残高
  6. 現金および現金同封物の期末残高

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4 営業活動によるキャッシュ・フロー区分について

4-1 営業活動によるキャッシュ・フローとは

「営業活動によるキャッシュ・フロー」の金額は、企業が外部からの資金調達に頼ることなく、営業能力を維持し、新規投資を行い、借入金を返済し、配当金を支払うために、どの程度の資金を主たる営業活動から獲得したかを示す重要な情報となります。すなわち、本業によってどの程度資金を稼いだかを知るための情報です。
「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分には、①営業損益計算の対象となった取引にかかるキャッシュ・フロー、営業活動にかかる債権・債務から生ずるキャッシュ・フロー並びに②投資活動および財務活動以外の取引によるキャッシュ・フローが表示されます。
「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に含まれる投資活動および財務活動以外の取引によるキャッシュ・フローの例としては、災害による保険金収入、損害賠償金の支払、巨額の特別退職金の支給などがあります。

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4-2 直接法と間接法

営業活動によるキャッシュ・フローの表示方法として、会計ルール上は「直接法」と「間接法」という2つの方法が認められております。
直接法(図3-1.参照)とは、営業収入、原材料または商品の仕入れによる支出等、主要な取引ごとにキャッシュ・フローを総額表示する方法をいいます。
この方法によると資金規模が明示されることになり、情報としての有用性が高いという特徴があります。

フロー計算書とは
Ⅰ 営業活動によるキャッシュ·フロー
税金等調整前当期純利益 3738
減価償却費 685
のれん償却額 30
有形固定資産除却損 20
貸倒引当金の増加額 80
退職給付にかかる負債の増加額 50
受取利息および受取配当金 −708
支払利息 470
為替差額 10
売上債権の増加額 −869
たな卸資産の減少額820
仕入債務の減少額 −290
未払消費税等の増加額 63
小計 4099
利息および配当金の受取額 608
利息の支払額 −305
法人税等の支払額 −2285
営業活動によるキャッシュ·フロー 2117

4-3 フロー計算書とは 営業活動によるキャッシュ・フローの分析

「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、本業から生み出された資金であるため、それがプラスであるのかマイナスであるかは企業の存続可能性を考えるうえでは、非常に重要な意味を持っています。
「営業活動によるキャッシュ・フロー」がプラスであれば、企業の本業は順調といえ、さらなる事業展開のための設備投資や研究開発のための投資が可能になります。また、財務内容を改善するために、金融機関からの借入れの返済を行ったり、株主に対して剰余金の配当を行うことも可能になります。
逆にマイナスとなっているような場合、本業でのマイナスを補填しなければなりません。たとえば、投資有価証券の売却や金融機関からの借入れなどにより、「営業活動によるキャッシュ・フロー」のマイナスを他の活動区分により、補填することになります。ただし、売上げが伸びている成長企業で利益が出ている会社であっても、一時的に「営業活動によるキャッシュ・フロー」がマイナスになる可能性があるため、慎重に分析する必要があります。図2—4のような製造業である場合、仕入れから販売までにタイムラグがあるため、特に売上げが伸びて仕入れが増加した場合、一時的に資金不足におちいることがあります。

國貞克則先生に聞く「決算書の読み方 初心者向け」全6回(4)キャッシュフロー計算書(CS)とは

CSは英語で“Cash Flow Statement”、直訳すれば「現金流れ計算書」、つまりCSは現金の出入りを表す「収支計算書」です。
収支計算書は、通常「収入」「支出」「残高」の3つの欄に分かれていますが、企業が作る収支計算書であるCSは違った分かれ方をしています。「営業活動によるキャッシュフロー」「投資活動によるキャッシュフロー」「財務活動によるキャッシュフロー」の3つの欄に分かれています。なぜこのように分かれているかということは、連載の第1回で説明したとおりです。
図4-1で各欄に何が書かれているかを説明していきましょう。一番上の営業キャッシュフローの欄は、商品やサービスの販売による収入や、商品の仕入や給料の支払いによる支出など、営業活動による現金の動きが表されています。

図:CSの構造

図4-1のCSの表の中の項目を見てください。営業収入(+)、商品の仕入支出(-)、人件費支出(-)、その他の営業支出(-)など、現金が入ってくるものは(+)、現金が出ていくものは(-)で表されています。 フロー計算書とは
真ん中の投資キャッシュフローの欄は、株式などの有価証券の取得や売却、工場や設備などの固定資産の取得や売却など、投資活動による現金の動きが表されています。
図4-1のCSの表の中の項目を見てください。有価証券や固定資産を取得すれば現金が会社から出ていくので(-)、有価証券や固定資産を売却すれば現金が会社に入ってくるので(+)で表されています。
一番下の財務キャッシュフローの欄は、株式発行による資本金としての収入や、金融機関からの借入やその返済など、財務活動による現金の動きが表されています。
図4-1のCSの表の中の項目を見てください。借入をしたり、株式発行して資本金を注入してもらったりすれば現金が会社に入ってくるので(+)、借入金を返済すれば現金が会社から出ていくので(-)で表されています。

見れば会社の状況はおおよそ把握できるキャッシュフロー計算書とそのグラフ

キャッシュフロー計算書(CS)の重要性が高まってきている

昔は、決算書と言えば基本的にPLとBSでした。それは、人為的に作りだした事業年度(通常1年)の営業活動を正しく計算するということがまず必要だったからです。つまり、PLは1事業年度の正しい営業活動を反映させるために、現金の動きのありなしにかかわらず取引が成立すれば、その取引はその事業年度のPLに計上されます。しかし、このことによってPLだけでは現金の動きがわからなくなってしまいました。
さらに、PLは会計上の前提や認識によって正しい利益を計算していきますので、それが少し悪用されればすぐに粉飾に繋がっていきます。
一方、CSは現金の動きをあらわす表ですから、なかなか粉飾できません。CSの現金残高が、金庫や金融機関に預貯金されている現金と一致しなければ、CSはどこかが間違っていることになるからです。
私の会計研修には、米国の子会社に社長として赴任したが、「会計がわかっていないと社長は務まらない」と言って、帰国時に私の会計研修を受講される方がおられます。彼らが口を揃えて言うことは、米国の金融機関が企業にまず提出を要求してくるのはCSだということです。
日米欧ともに、決算書の掲載順はBS、PL、CSですが、アマゾンの決算書を見ると、最初にCSが掲載されています。CSの重要性が高まってきているのだと思います。

キャッシュフロー計算書(CS)から会社の状況や経営者の意思が見えてくる

図:CSの8つのパターン

業績の良い会社は営業キャッシュフローが(+)になります。営業支出より営業収入の方が多い、営業活動をすればするほど会社に現金が増えている状況です。①から④のパターンです。
そのような会社は一般的に財務キャッシュフローが(-)になっています。つまり、借金をどんどん返済して経営安定性の高い優良企業を目指すわけです。②や④のパターンです。
③のパターンは調子が良くて将来戦略が明確な優良企業の例です。調子の良い会社ですから、もちろん営業キャッシュフローは(+)で、営業活動によって現金を増やしています。将来の事業戦略が明確な会社は将来に向けての積極的な投資を行います。ですから投資キャッシュフローは(-)です。この投資に必要なお金を、自分で稼ぎ出したお金(営業キャッシュフロー)だけでなく、銀行からの借入金や株式の発行などによって調達してきているのです。なので、財務キャッシュフローが(+)になっています。
一方で、業績の良くない会社は営業キャッシュフローが(-)になります。営業収入より営業支出の方が多い、つまり営業活動をすればするほど会社の現金が減っていっている状況です。⑤から⑧のパターンです。
そのような業績の悪い会社に天からお金が降ってきたりしませんので、そのような会社は一般的に財務キャッシュフローが(+)になっています。つまり、事業効率が悪くて営業活動すればするほど会社のお金が少なくなっていっているのを、借金をしてなんとか現金をつないでいるような状況です。⑤や⑦のパターンです。
さらに状況が悪いのは⑤のパターンです。営業キャッシュフローが(-)で財務キャッシュフローが(+)になっています。さらに、この会社は投資キャッシュフローまで(+)です。
投資キャッシュフローがプラスというのは、誤解しやすいのですが、投資活動によって現金が入ってきているということです。つまり、自分が持っている土地や株式などの資産を売却してお金を集めているわけです。
このような「-、+、+」の会社は、営業すればするほど会社のお金が少なくなっているのを、銀行からお金を借りるだけでなく、自分の体を切り売りしてなんとかお金を繋いでいるという、かなり状況の悪い会社です。
このように、CSのパターンを見れば会社の状況はおおよそ把握できるのです。

スーツに笑顔の國貞先生

國貞克則(くにさだ・かつのり)
ボナ・ヴィータ コーポレーション代表取締役
1961年岡山県生まれ。東北大学機械工学科卒業後、神戸製鋼所入社。海外プラント建設事業部、人事部、企画部、海外事業部を経て、1996年米国クレアモント大学ピーター・ドラッカー経営大学院でMBA取得。2001年ボナ・ヴィータ コーポレーションを設立。ドラッカー経営学の導入支援や会計研修が得意分野。著書は『財務3表一体理解法』(朝日新書)、『ドラッカーが教えてくれる「マネジメントの本質」』(日本経済新聞出版)など多数。訳書に『財務マネジメントの基本と原則』(東洋経済新報社)がある。

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